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「第63回NHK杯体操」の大会プロモーションに協力いたしました

「第63回NHK杯体操」の大会プロモーションに協力いたしました

去る2024年5月16日(木)から5月19日(日)、
群馬県高崎アリーナで行われました「第63回NHK杯体操」に公益財団法人日本体操協会の
大会プロモーション委員協力員として大会プロモーション及び大会運営にご協力いたしました。

具体的には
○デザイン/動画制作
・大会タイトルバックデザイン
・大会プロモーション動画(SNS)
・大会オープニング動画
・選手入場動画
・エンドロール(選手入場メイキング映像)

○物販
・大会プログラム制作

○大会進行
・映像指揮

本記事では、私視点で4年に1度の五輪選考会を振り返りたいと思います。

4年に一度の五輪選考会。4年ぶりの有観客。そして橋本大輝選手の欠場。

5月20日朝刊スポーツ面
特筆して男子2日目競技の模様を書きたいと思います。

今年はオリンピックイヤーということもあって例年より動員が増えることは容易に予測できます。
ですがここまでの客入りは予想していませんでした。

2階席は超満席。
各選手の応援団から応援合戦が始まるとそれだけでこみ上げてくるものがありました。

1階アリーナ席も4月の全日本体操個人総合選手権より客入りは良く、競技エリア内と言っても過言ではない
距離で観戦できるアリーナ席の魅力が伝わり始めたのかなと思います。

私は2階の大型スクリーンの裏で進行に合わせた映像の合図(ディレクション)を出しておりました。
少し見下ろす形で観客席と競技場内を見渡せるのですが選手たちが発する緊張感が応援によって渦となり
私のからだにも緊張感を伝えてくれました。

これぞ五輪選考会。

五輪選考会では4年ぶりの有観客は
この大会のフィナーレを飾る男子2日目競技の舞台が整ったことを感じさせてくれました。

そして何よりも変化を感じたのが選手たちの「俺がいってやる」という表情です。

不運にも橋本大輝選手が前日練習で指の負傷があり選考会を欠場。
頭2つ分は抜きんでた実力者が不在となると残された選手たちの士気は落ちるのがかつての体操界でした。
(冨田洋之さんしかり内村航平さんしかり)

しかし、今大会に出場された選手たちの目はいつも以上にギラギラしていたと私には見えました。

はっきり言って全員が横一線。
「だれにでもチャンスがある」
そんな状況が橋本選手欠場によって生まれたのです。

さらにこの状況は観客・ファンの方々が「推し」への声援に熱をこめるきっかけにもなったはず。

橋本選手一強には違いありませんが、
これほど日本体操界が粒ぞろいだと証明できたのは
観客・ファン、関係者のみならず報道陣や他競技団体にも伝わったことと思います。

「エース不在」
この状況をここまで感じさせない素晴らしい演技をされた選手の皆さんには本当に何度も感謝を申し上げたいです。

一変した中継構成。歯車が回り始めたキングらレジェンドの普及活動

ここからは新たにテレビ中継の視点も加えたいと思います。

今回のテレビ中継ではたんなるスポーツ中継にとどまらずしっかりと番組構成が考えられていたと感じるものがありました。

それがキング内村らレジェンドのゲスト出演です。

女子競技では田中理恵選手が特設スタジオで女子体操の魅力を明るく楽しく伝えてくれました。
女子解説の寺田明日香さんとも息がぴったりでしたね。

男子競技ではキング内村と亀山耕平さんがあん馬と跳馬の実演解説を披露してくださいました。
これだけでお金が取れるくらいの大サービスでテレビをご覧の方にも体操の魅力が伝わったと思います。
解説の塚原直也さんとの掛け合いは綱渡りのような絶妙さで緊張と緩和がうまく演出されていました。

ゲスト出演のお三方はひとこと説明のわかりやすさや伝えたい情報の選び方などとてもお上手でした。
それぞれ体操普及に力を入れておられる経験がきれいに噛み合った素晴らしい番組構成でした。

ここからは個人的な視点です。
実はゲスト出演のキング内村と解説の塚原直也さんは私も同じ体育館で練習をしていたという共通点があります。さらに言えば男子ヘッドコーチの佐藤さんも。

活動する場所はそれぞれ異なりますがこうして一つの大会を共に創り上げたというのは感慨深いものがありました。

ここまでファンと関係者に愛される選手はいない田中佑典

モニター田中佑典
ここからは選手一人を取り上げ、私視点の感想を書きたいと思います。

まずは田中佑典選手。
田中選手とは学年で2つ後輩の私はいつも体操のお手本として田中選手を見てきました。

時は流れ、私が大会プロモーション委員の仕事に就いたことで
光栄なことに田中選手とはお見掛けしたらご挨拶する仲になれました。

田中選手の持ち味はもちろん「美しい体操」
なかでも平行棒、鉄棒は息をのむほどの美しさです。

しかしこの2種目で苦虫をかむ思いを多くしてきたのも事実。

私がもっとも記憶しているのは2012年ロンドンオリンピック。
期待された鉄棒で落下がありました。

ここぞという場面で力を出し切れない。
田中選手はそんな自分と戦い続けたのだと思います。


男子2日目競技の平行棒と鉄棒の着地。
普通なら心臓が飛び出てもおかしくない状況で
田中選手は着地を決め切りました。
会場中の応援を力に変えて。

個人的には田中選手の殻が破れて進化した瞬間だったと思います。

惜しくもパリ五輪代表は落選してしましましたが
これからも田中選手の挑戦と活躍を期待したいです。

大会中に成長を見せた土井陵輔(パリ五輪代表補欠)

土井選手は今春、日本体育大学を卒業、セントラルスポーツへ所属を移し環境をガラッと変えました。
体操選手の特に男子は大学生から社会人になる時期が自分を変える一番の機会(チャンス)です。

4月の全日本体操個人総合ではどこか小さくまとまった印象を持ちました。
安定感や粘り強さといった社会人らしい体操をしたかったのかもしれません。
結果として5位に入り存在感を示しました。

ところが男子競技1日目、鉄棒で車輪の勢いが不足するという珍しいミスからの落下。
順位も落とし代表争いから大きく後退します。

だれもが土井選手の下降を予測したでしょう。

ところが土井選手の進化はここからでした。

男子競技2日目はあん馬スタートからのおそらく土井選手が得意な種目演技順。
3種目目の跳馬で勢いに乗り、平行棒を気合で通し切りました。

吹っ切れたのは鉄棒の演技。
前日の失敗が頭をよぎったかもしれません。
そこを土井選手、見事はねのけました。

この時点で3位と一気にごぼう抜き。
ダークホースを演じました。

会心の演技で吹っ切れたまま最終種目ゆかへ。

ゆかでは土井選手のリ・ジョンソン(後方抱え込み2回宙返り3回ひねり)
に注目が集まります。

最初の技リ・ジョンソンを決め、演技を通し切りました。

土井選手の見たかった笑顔がここで爆発。

これぞ土井陵輔のゆかでした。

土井選手がもしも総合力で勝つ堅実な体操を目指しているとしたら
そうではないと断言します。

土井選手の体操は爆発力のある体操です。
イメージは2008年の北京五輪当時の内村選手。
メインのゆか、跳馬。サブの平行棒、鉄棒。我慢のあん馬、つり輪。

試合後の表情を見ればわかります。
思い切ったな演技をした時の方がいい表情をしているのです。

パリ五輪代表補欠というチャンスが転がってくるところも
「持っている男」土井選手の持ち味。

ぜひとも自分のスタイルに自信をもって頑張ってほしいと思います。

戦い方を模索する三輪哲平(2023年世界体操けがのため欠場)

パリ五輪代表から落選しゼロからのスタートとなる三輪選手。
高い総合力と日本人好みの体操は往年の田中和仁選手を思わせます。

個人的には器用なあまりルールに適応しすぎた印象があります。

種目のできばえに穴がない一方で強みが目立たない。
三輪選手ほどの総合力のある選手が勝てない理由はここにあると思います。

ルールと言えば、体操競技は4年をひとサイクルとしてルールの変更が行われます。
そして来年はルール変更の年。

現時点で見聞きできる情報の中では「3回宙返り下り」がキーワードと言えます。

体操競技のルールにはどの種目もボーナス要素が設けられています。
そのボーナス要素が「3回宙返り下り」なのです。

三輪選手にはぜひ日本体操界の「3回宙返りパイオニア」になっていただきたいです。
器用な選手だからこそいち早く新しい技に取り組み、周りとの差別化を図ってほしいと思います。

つり輪と鉄棒で三輪選手の3回宙返り下りが見られる日が来るとき彼の日本代表入りは確実なものとなるでしょう。

三輪選手にはぜひルールに適応するのではなくルールを利用して勝ちを目指してほしいと思います。

選手入場動画の裏側

グリーンバック撮影風景-1.jpg 2024年5月21日
最後はこぼれ話として選手入場動画の裏側を書きたいと思います。

今回は選手のポージング動画をタイトルバックに合成して選手入場を盛り上げました。
体操の国際大会をお手本として、ようやく国内大会でもこの演出手法を実現することができました。

選手たちには会場練習の時間を割いていただいて撮影に臨んでいただきました。
納得いくまで何度も何度も撮りなおす選手、コミカルなポーズをして盛り上げ役を買ってくれる選手、
支援企業のアピールを怠らない選手、照れながらも撮影に協力してくれた選手、

選手たちのご協力がなければ完成しなかった選手入場でした。

選手たちの世代もあるのでしょうがカメラ慣れしているのは間違いなく、
カメラに向かうと素を出してくれるというのも撮影を担当して気が付いた点でした。

個人的には今後も選手の魅力を伝える手法として活用したいですね。

選手が演技するだけじゃない大会を目指して

競技会での選手の役割は「限界に挑戦すること」。

確かにそうなのですが大会運営側は「ただの記録会」で終わらせてはいけないのです。

選手入場の撮影しかり、
「ありがとうラン(競技終了後に出場選手が競技場内を一周するイベント)」しかり
選手が大会づくりに関わる場をつくる、
ファンとのふれあいや交流の場をつくる

この要素が選手たちも「また出場したい」と思ってくれるのではないでしょうか。

そうすれば「ただの記録会」から脱却できると思います。

ですがまだまだ課題はあります。
一流の音楽コンサート、人気格闘技興行、映画プロモーション
こういったエンターテインメント分野の文化を学びつつ
体操競技会での最適解を目指したいです。

もしも「第63回NHK杯体操」をご覧になって
大会演出や大会プロモーションに興味をお持ちの
エンタメ分野のプロフェッショナルの方がいらっしゃいましたら
ご意見ご感想をお待ちしております。

bodyengagement@gmail.com




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【おまけ】NHK杯スクリーン裏の模様

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